長女からの冤罪

妻が夕飯の準備をしているので、長女と次女を外に連れ出し庭で遊ばせる。

こっちは延びた草をしゃがんでむしる。

お隣さんも子どもたちを遊ばせていて、ご夫婦に挨拶。長女次女はもうすっかり慣れたお隣さんの子どもたちに近寄って三輪車見せ合ったりストライダー貸したりしている。

しゃがみながら位置を移動させた瞬間、ぼくのサンダルがアスファルトにこすれて、「ブッ」という音が出た。そしたら、長女がこっちをむいて、「パパ〜、いま、おならした〜?」と大きな声で、ニコニコしながら聞いてくる。

なんてことをいうんだ、君は!この無邪気ちゃんめ!

たしかにこの態勢はやばい。見方によってはそうとしか見えない。

「ん〜?いやサンダルの音だよ〜」と返すものの、「おならした」という偏見ありきだったら、すごい言い訳がましく聞こえるんじゃないか。ウソをいったこのお隣さん、と奥様に思われたら我が家の沽券に関わるどうしようとか、いろいろ考えてしまって、いつになく声が細くなってもた。

こういうのはタイミングが大事だ。時間がすぎればすぎるほど、あとで取り返しがつかなくなる。だから、すぐに立ち上がって、「いまのはですね、これが、こうなって、出た音です」とデモンストレーションやるのも手だ。でも、そのとき今の音がでなかったら状況はより深刻になるし、こんなことで、貴重なおとなりさんの家族団欒の時間を奪うのも気が引ける。

時間ばかりがすぎ、一瞬凍りついた空気は溶け、子どもたちはまたキャッキャたわむれはじめる。気まずい思いをしているのは、ぼくだけであることを祈りながら、目の前の草に救いの道を求め、もくもくと、また草を抜いた。不思議ともうあの音は出なかった。