「パパ、太ったね」(長女)
寝る前。寝床にいっしょに行ってと言われて食卓の席を立ったら。たしかにラーメンとビールのせいで腹が出た。ちゃんと気づく長女の抜け目ない観察眼。
「おれ、釣り堀好きになった」
息子。昨日いった遊園地で一人1時間釣り堀。ぼくと妻は娘たちの相手なのでそばにいれない。一人で大いに結構な年齢で、勝手にチョウザメを2回釣り上げて「チョウザメ賞」カードを2枚もらっていた。周囲は大人ばかりで、息子ほど釣った人もおらず、驚かれていたらしい。それがまた自信になったようだ。
いっしょにいったご近所さんのママがたまたまチョウザメを釣り上げていたときにそばにいてくれて息子が持った写真を撮ってくれた。
「あの写真、送られてきた?」
「まだ」
濁った汚い池でしかないが、真ん中の方にいると思って真ん中の方に投げ込んだこと。魚影が見えたからそこを狙ったことなど。そばにいなかった分、報告で知る。
一人で寂しくなかったか、退屈しなかったか尋ねても「ぜんぜん」とケロットしている。
「連れなくても、やることいっぱいあるんだよ」
1日たってもなお「釣り堀またいきたい」とまだ興奮冷めやらず。
チョウザメ賞はおもちゃがもらえる。彼はいらないから、ご近所さんのかわいがっている男の子にあげるんだと、男の子を呼んで選ばせてあげていた。その子と合流できたときは彼はバイキングの列に並んでいたが、その列も未練なく出てその子を景品交換所まで誘導していた。お兄ちゃんになった。
ぼくは小さい頃、この釣り堀に父と来た覚えがあるが、餌の団子が固いくて独特の臭いがすること、連れないこと、池が淀んでいること、父と気まづいことなどで印象が全くよくなかった。変わらぬ風景に不安だったが、そんなことをつゆ知らずの彼は楽しめたようで何よりである。
「ママ重かっただろうね」
娘2人を連れて山奥の公園へ。一番奥に行こうよ、なんかあったはずと誘う。
「なにがあるの?」
「なんか遊ぶところ」
前回来たときはこっちに引っ越してきてから間もないときだった。まだ次女は生まれていなくて、息子と長女と妻と4人だった。
「でも、お腹の中にいて一緒にいってたよ。お腹の中でチャプチャプしながら」と次女にいうと上の言葉。すぐママの気持ちになれるのがこの子のすごいところだ。
奥に向かうが途中で砂のある道端で止まり、2人で砂を盛り、木の棒を立ててケーキに見立てる。黄色い花をみつけて渡すと飾る。
花に関心が向いて、スミレやヤエザクラを見つけて写真を撮る。これは息子にはなかった。
奥にようやく着くと記憶のとおりアスレチックがある。熊よけのための大音量のラジオもラジカセから流れている。新たにハンモックがたくさん並んでいた。寝転がるととても心地がよい。走り去るイタチを見つける。
「わたし、イタチやだ。こわい」と長女。メルを殺めた第一容疑者だから。同感だ。
長女が家に欲しいのは犬とハンモックらしい。息子の同級生の家にはその二つともあると羨ましがっていた。
帰りしな、遠くの景色をみた先に新しい図書館の現場がくっきり見えて驚く。長女が「あ、あの丸い円盤みたいなのね」と見つける。
そのあと見晴らし台にいく。遊具はないが娘2人で側転をしたり砂で遊んだりランボーダンスしたりいつまでも遊びをみつけて楽しそうだ。なるべく「もう行くよ」とはいわないようにした。自然と区切りがつくまで待つ。
次女は終始裸足だった。
「今度はソリとグローブとボール持ってこようね」
またこの公園に来ようという帰りしな、「ドッチボールしたいな。保育園で」とつぶやく。次女は強かったらしい。
長女はまたすぐ遠足でくるそうだ。
息子はバレー部に入部することを決めた。スポーツの面白さに加え、顧問や周りの友人の雰囲気の良さで楽しめるからだそうだ。最初はとにかく基礎練で身体づくりだそうた。ボールに触れるのはまだ先なのだろう。
「バネをつけるにはどうしたらいい?おれオスグッドだから筋トレはできん」
「ストレッチじゃないかな。ストレッチはしろと先生もいってたでしょ」
「部にはスポーツドクターもいるんだって。さすが強豪。だから怪我しても大丈夫なんだとか。中学校は廊下を走ってもいいんだって。放課後は。その前は走ったらだめ」
ハイキューの漫画も読みたいと。
「まだまだたくさん読みたいマンガある。おれ、将来の夢は家をマンガ王国にすること」
いままでスクールには通っていたけど、チームに所属するのは初めてだ。ついに勝ちにこだわった世界に入ってゆく。3年間楽しむのを第一に、怪我なく頑張ればそれもいい経験になるだろう。
プールをひさしぶりに見に行けた。姉妹で4月からバスで通っている。運転手から飴をもらえたり、楽しいらしい。
長女は背泳ぎ、次女はクロールを隣りどおしの別々のコースで練習していた。途中で先に長女がぼくに気づき、手を振る。次女はなかなか手を振っても背泳ぎに夢中で気づかない。長女も次女も待機しているときに、長女が指で隣のコースの次女に合図してぼくがいることを教える。とっさに次女がこっちを向き手を振る。彼女たちはバスに乗り込み、ぼくは自転車で帰路に着く。
途中でバスがオンボロにもかかわらず1万5千円もする小さなステーキハウスの横を通り、バスの運転手さんが「一度いったけど二度と行かない」という話をしていたと長女が帰ってきてから話す。
「パパもむかし、一度行ったことあるよ」
「おいしかった?またいきたい?」
「もう行かなくていいかな」
お金に困らなかった時代の遠い昔の話。スイミングは来週テスト。