長女が学童で「びっくりばこ」を作って持って帰ってきた。手のひらサイズの白い紙の直方体で、ストローが刺してある。それを口で息を吹き込むと、中の傘袋が膨らんで、箱からニョキッと膨らんだ傘袋が出てくる仕掛け。
家でそれをみた妻がひらめいた。職場の子にどうしたらいいだろうと悩んでいた課題が、それをみて突破口がひらけたそうだ。「ありがとう」と長女にお礼をいいつつ、ビニール袋にその子がアンパンマンが好きだからとアンパンマンを描き始めた。
長女が妻の仕事の役に立った日。
寝床にはぬいぐるみがたくさんある。その中の一つは、イケアで息子がまだ小さいときにかったダックスフンド風のベージュの犬のものだ。「ゴウタ」という名前がついている。息子は10年近くのつきあいになろうか。愛着がまだあって、寝る時も横にいる。
息子が先に寝たある日。
次女があとから寝床にいくと、ゴウタに枕と布団がしてあって、その横で息子は寝かかっていた。ぼくは息子より後、次女より先に長女と布団に入り、長女を寝かしつけながら様子をみている。
次女が「枕がない」といいはじめて、ゴウタの枕をよこせと息子にいう。
息子がエエ〜っとしぶると、「人形やん。」と次女。
「人形じゃないよ、ぬいぐるみだよ」と息子。
「あそっか。でも、生きてないやん」
「生きてるよ」
「しゃべらんやん」
「しゃべらなくても生きてるものもいる。ミミズとか」
次女、しばらく考える。
「ミミズは、小さいから声きこえんだけやよ」
と反論。
「大きくてもしゃべらん動物もおるよ。象とか」と長女が横槍を入れる。
息子も次女も少し考えて「象はしゃべるやろ」。パオーン。
「あ、そっか。」
長女も思い直して、また考える。
「キリンとか」と訂正。
「キリンって、なかんの?」と次女。
それぞれが、おのおの頭を働かせている。
結局、別の枕をゴウタに敷くためにぼくが息子にわたして、玉突きでゴウタのものは無事、次女に渡った。ぬいぐるみに生命があると信じる少年と、それを否定する幼児。微笑ましく、珍しい光景であった。
最近乾燥しているのか、長女の肌がカサついて、かゆいそうだ。お風呂や寝床で腕や背中をさすってやる。かわいそうに。背中はすこし皮がむけて、血がでている。
ニベアの乳液がいまのところ救いだ。ほんとうは皮膚科につれていってあげたいのだけど。こないだは唇が痛いというので、リップクリームを買ってあげた。
一昨日の雪がしっとりふった小学校に送る車の中。
「きょうは唇が乾燥していないでしょ」
「うん。なんで?」
「雨降ったり雪ふったり、空気の中に、水がたくさんあるから。雨や雪って、いいこともあるんだよ。肌がしっとりする。」
「ふうん。なめたらいたくなくなるよ」
「なめちゃだめ。また乾いて、すぐ痛くなるぞ」
同じこと、息子にも言った気がする。息子はなめ続ければいいと抵抗していた。
灯油ストーブのせいだろうか。家もカサついているようだ。洗濯物を干すようにしようかな。