手のほくろの昔話

長女が次女にまつわる昔話を。ぼくらは忘れていた。

次女がまだ年少のとき。家の階段で転んで泣いた。手をついて打ったのもいたかったようだ。

「ほくろ、とれちゃった」と泣いている。

次女の手のひらの手首の近くには小さなほくろがあった。

みんなで近寄って、手のひらを見たらない。衝撃で皮が向けたか。

「大丈夫でしょ」とぼく。

「もう一つの手をみせて」と長女。

次女がもう一つの手を見る。

「あった」

みんなで笑ったという話。

息子の雑学

図書館のおかげで、雑学に詳しくなった息子から教わることが多くなった。ICカードはどうして「ピッ」とタッチしただけでお金を引き落とすことができるのか。雪の粒子は本当は氷なので透明なはずなのに、なぜ白色に見えるのか、など。

公文のおかげもあって、古典にも興味が出てきたようで「堤中納言物語」で『虫愛でる姫君』のくだりも。結婚したらお歯黒、子どもを生んだら眉を剃っていたそうで、姫君は虫を愛でながら歯も白く眉毛も普通にあるので気味悪がられたとか。今では普通。文章を読むと、虫の愛で方が感性によるものではなく理性的な興味であったところが平安の宮中では珍しかったとある。勉強になる。

図書館で働くとか、向いてるのかもしれない。

ごちそう

メルちゃんのおかげで、我が家の子どもたちはトンボをみたらエサだと思うようになった。今日も息子と長女で7匹捕まえていた。車で出かけていた先のことだ。ナイロン袋を臨時虫かごにして、家に慌てて返って食べさせた。思いっきり首を伸ばして食べる仕草がかわいい。

ぼくもクローバーが生えているのをみたら、これまでは単なるいまいましい芝生を破壊する雑草だったのに、今ではメルのご馳走である。美味しそうに見える。価値って、実に軽く変わるものだ。

ねこのチー

ねこのチーというアニメーションを新たに見始めている娘たち。それを一緒になって見る息子。内容的には幼いはずなのに、面白いのか聞くと「おもしろいよ。あいつかわいい」とのこと。動物好きではあるものの、アニメでも愛おしく思えるらしい。

動物のお医者さんになったら?」

「え、いやや。解剖あるから」

「助けたいと思わんの?」

「それは思うけどさ」

昨秋の鶏の屠殺のときがトラウマになっているのかもしれないな、だとしたら申し訳ないけど。

「助けたいという思いがある方が大事だとおもうけど。父ちゃんの友だちで解剖がぜったい駄目だといっていたけど、いまは医者になった奴もいるぞ。なれらしい。」

そいつはよりによって消化器外科で手術の毎日。小学校のときは理科の授業で内蔵を見て貧血で倒れたのに、というエピソードは同窓会での語り草。

とりわけ獣医になってほしいわけではないけど、その優しさは活かせないものか。

マラソン大会

夫婦でマラソン大会の応援。朝、「父ちゃんも日曜日は頑張った。何位でもいい。自分で全力でがんばったといえれば」と言い聞かせて送り出した。

今年から長女が登場。なんと2位であった。コースにでて、運動場に戻ってきたところで妻と応援するも、こちらを向く余裕がないくらい辛い顔で走り抜けていった。でも少し加速して、その後のラストスパートもできていた。妻が「根性あるわ」と関心していた。元陸上部で同性なこともあり、感動ひとしおなのだろう。ぼくは1位でなくてよかったとおもっている。追われるのは辛いし、いつか1位でなくなったとき、がっかりするのが可愛そうだ。大切に思う父からしたら、娘が達成して喜ぶのもうれしいけど、傷つくのも心配なのである。

息子は19位。2周する。近くにきたら大きな声を出して応援した。1周目はまだ余裕があり、笑顔になって駆け抜けた。2周目は坂をあがったところで、辛い顔をしたまま走っていった。少しペースをあげていた。息子はこの5年間で13位と20位の間を行き来している。来年、いよいよ最後か。妻と一緒に特訓できたらいいね。まずは姿勢から。

どの学年にも、マラソンが得意でない子もいる。最後尾で先生と共にやってくる。沿道の保護者が拍手と掛け声で応援する。それを受けて、ヘトヘトに歩いていたのに再び走り出そうとする。5年生でも一人。運動場の中の最後のコーナーにさしかかったとき、コースに沿ってゴールした順に一列に並んだ児童が声をかける。声をかけてない子もいる。息子はどうするかと見ていたら、しっかりその子の方を向き、なにやら声をかけていた。遠くから見ただけだったからはっきりとはわからないが、その姿勢は確認できた。惻隠の情というやつだ。順番より、自分に頑張ったことより、その方が大事だし、褒めてあげたい。

5、6年の女子をみて、もう大人みたいな子もいる。大きなお姉ちゃんがいる友人ママにきくと、パパとお風呂に入るのもあと1年〜3年だという話になる。もうカウントダウンは始まっている。あんな体つきになったらもうぼくも憚られる。

第一子は甘えなくなるらしい。息子と同級生の男の子で、お姉ちゃんをもつママは、まだまだママに甘えてくるという話をきいて妻が「うちはもうそんなことはない」と驚いていた。

それでも、マラソンが終わって運動場から教室に引き上げるとき、ママの方に一度寄った。妹が何位だったか知りたかったらしい。それをみた友だちママが「まだ来るじゃん。かわいいね」と言ってくれた。

それにしても、70人が同じ体操服、赤白帽で走ると我が子を見つけられない。来年からは自由服にするべきだと思う。ハロウィンだし。工作で自作のTシャツでもつくってもよし。

 

42.195

無事完走。ゴール後、ぼくが足を引きずっていたのをみて、背中を次女が押してくれた。息子はリンゴを食べたいというと切ってくれた。長女はぼくが一人で食べきりそうで、妻から「分けろ」といわれた卵とじを真っ先に「パパ食べていいよ」とくれた。長女と次女はテンション高く、風呂上がりに不思議な創作の踊りを披露してくれた。日本語ではない言葉をつかっていた。